【エッセイ】かたつむりとかなしみ
かたつむりという生きものは、かなしみという感情に親和性があるように思う。新美南吉の童話『でんでんむしのかなしみ』を通して考える。
野島智司(マイマイ計画)
2023.09.14
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かたつむりという生きものを、人間の感情にたとえるなら、かなしみという感情にもっとも親和性があるかもしれない。
『ごんぎつね』で知られる児童文学作家、新美南吉の童話の1つに『でんでんむしのかなしみ』という作品がある。主人公のでんでんむしは、自分の背中の殻の中にかなしみがいっぱいつまっていることに気づき、嘆く。そして、友達にそのことを話すと、友達の殻の中にも、同じようにかなしみがいっぱいつまっているということを知る。やがて、かなしみは誰もが持っているということに思い至り、「自分のかなしみは自分で堪えていくしかない」と嘆くのをやめるのである。
昭和10年に発表されたこの童話。新美南吉は、どうしてかたつむりを主人公にそのような童話を書いたのだろうか。