【お知らせ】『カタツムリの世界の描き方』(三才ブックス)のこと
気づけば10年ぶりの単著の出版。楽しみなのと同時に、けっこう緊張感もあったりします。(小心者なので……)
カタツムリについて生物学的なことも書いていますが、カタツムリ学であると同時に私という個人について書いた本でもあり、また同時に社会について書いたようなところもある、理系の本なのか文系の本なのか、ぬめぬめしてつかみどころのないような本です。
(でも、鈴木千佳子さんデザインの装丁には、やさしい肌触りの良い紙が使われています。ぬめぬめしていませんので、ご安心ください。)
カタツムリという生きものは、ある面ではとてもナイーヴで、非効率に見える行動をする、敬愛すべき生きものです。ゆっくりと行動し、行き当たりばったりで、何かあればすぐに殻に引っ込んでしまう、そんな生きものです。男らしくも女らしくもない、雌雄同体の生きものです。
そんな余白だらけの曖昧な生きものが、この本の主人公です。
カタツムリは人間からみるとかなりののんびり屋であり、もしかすると説教してやりたくなるという人もいるかもしれない。でも、ちょっと待ってほしい。世界的な感染症の流行や地球規模の気候変動に象徴されるように、人間は今、経済効率優先のライフスタイルを見直すべきときに来ている。本当に大切なことは、効率とは別の視点にあると考えるべきではないだろうか。カタツムリの小さな目には、現代の人間社会がどう映るのだろう。一歩立ち止まり、私たちの足元にいる殻付きの生きものたちに、目を向けてみよう。そこにはきっと、これからの私たちの生き方を考えるヒントが隠されている。
原案はNPO法人グリーンシティ福岡さんで連載させていただいたコラム「かたつむり的世界観」です。その後、コロナ禍を経験し、メンタル的にも停滞期だったにも関わらず、こうして一冊の本としてまとめることができたのは、何よりこの連載コラムの蓄積があったからです。
本書は連載コラムの良さも残しつつ、さらに文体や構成を変えてリライトしたほか、書き下ろしをいくつも加えて、文章だけでなく、写真やイラストはもちろん、コラムや4コマ漫画、カタツムリ診断テスト(!)まで加わっています。
私の遊び心も心の奥底にある想いも盛り込んだ、スペシャルな一冊になっており、すでに連載コラムをぜんぶ読んだよ!という方にも楽しんでいただけるかと思います。
◯目次
第1章 カタツムリという、あいまいな生きもの
「カタツムリ」のあいまいな定義/カタツムリの軟体部/カタツムリは口の近くでフンをする/カタツムリの小さな脳みそ/カタツムリの基本的な生態/身近なものを最大限利用する食生活/大切なのはカルシウム/自然界は天敵だらけ/カタツムリの成長と繁殖/カタツムリの進化/陸上への進出/多種多様なカタツムリ/海外のカタツムリ/のんびりゆえの多様性/マイマイ診断/かたつむり見習いくん
第2章 地に足の着いた生き方
這うという行動様式/ヘビも這う/ミミズも這う/カタツムリの這い方/ぬるぬるねばねばの粘液/生まれたときから殻がある/触れることで世界を知る/行き当たりばったりな食べものさがし/食べあとのふしぎ/色とりどりのフン/地に足の着いた生き方/コラム1 カタツムリと数学/かたつむり見習いくん
第3章 非効率なカタツムリと、効率的なナメクジ
効率的なナメクジ/カタツムリとナメクジはどう違う/「ナメクジ化」というコストカット/どこにでも入り込める/天敵からはすべって逃げる/粘液による乾燥対策/情熱的な交尾/ナメクジの卵とカタツムリの卵の違い/イボイボナメクジというカタツムリキラー/ナメクジシティ/ナメクジという生き方/コラム2 変身して強くなる/かたつむり見習いくん
第4章 「他者を支える」カタツムリ
生態系のなかで/生態系を底辺で支える/嫌いだったマイマイカブリ/マイマイカブリの魅力/鳥類のカルシウム源/カタツムリを食べる右利きのヘビ/共生ってなんだろう/アリの巣に入り込むカタツムリ/カタツムリが受粉する植物/ヤマナメクジはキノコ好き/カタツムリの寄生虫/行動をコントロールする寄生虫/カタツムリの殻で子育てするハチ/余白のある生き方/コラム3 カタツムリのためのヒト講座/かたつむり見習いくん
第5章 カタツムリを通して見つめる人間の暮らし
時間感覚/カタツムリとジェンダー/カタツムリに潜む暴力/マイマイ米/カタツムリの居場所/カタツムリとわらべうた/好きになった理由/遊びの延長線/好きなものは好き/カタツムリとかなしみ/視点の多様性/少しずつ違って、少しずつ同じ/生きものと触れ合うことの大切さ/非効率な魅力/コラム4 おすすめカタツムリ本/かたつむり見習いくん
5月7日ごろから、お近くの書店やオンライン書店でご購入できます。(取り扱いがなければご注文ください🐌)
読んで気に入った方は、SNSなどでシェアしていただけると幸いです。「#カタツムリの世界の描き方」というハッシュタグをつけていただければ、私も気づきやすいので助かります。
なお、私は褒め言葉を心の底で素直に受け止められない習性があるので、気に入った方はぜひ、これでもか、これでもかというくらい褒めてください。(え)
SNSが苦手な方は、感想を街角で叫んでくださってもかまいません。(えええ)
表現に未熟なところはあるでしょうが、ともかく想いのこもった一冊であることは間違いありません。どうかどうか、多くの方に手に取っていただけますように!
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