【エッセイ】誕生日が春で良かった
誕生日の夕食は、野草の天ぷらが恒例である。私の誕生日は3月18日。ちょうど春の野草のおいしい季節なのだ。
この一年は特にいろいろなことがあり、今年はいつにも増して、誕生日が春で良かったと感じている。
野草の天ぷら(オオバコ、オニタビラコ、フキ)。
野草の天ぷらをつくるためには、野草を摘む必要がある。野草を摘むには、野外に散歩に出ることになる。そして、散歩に出ると、見つかるのは野草だけではない。
今年の誕生日は、糸島市内の宮地岳自然公園に、家族4人ででかけた。
この公園は独身時代、ちょくちょく散策に来る場所だった。当時、私は何かモヤモヤすることがあると、当てもなく自転車をこぎ出して、ペダルの赴くままに出合った自然のなかを散策するのが習慣だった。この公園もそうして遭遇した自然の1つである。
展望台からは可也山もよく見える。今の我が家(小さな脱線研究所)は可也山のちょうど裏側辺りだ。
ただ、4人家族になってここに来たのは初めてのこと。長男も、前回来たときのことは覚えていないようだった。
かたつむりに出会ったり、ぐるぐると走り回ったり、ただただ歩き回ったりして、展望台でお昼ごはんを食べて過ごした。帰りは宮地嶽神社にお参りした。
長男は私よりも早くたくさんのかたつむりを発見して得意気だ。
帰ってから、自宅の庭でも野草を摘んで、夕食は野草の天ぷら。妻が天ぷらを用意してくれているあいだ、私と長男はレゴでミニ神社を作った。
今年の誕生日の天ぷらは、ハコベ、ハハコグサ、オオバコ、ユキノシタ、タンポポ、オニタビラコ、ヨモギ、セリ、ツワブキ、フキ、酸味がおいしいスイバ、苦みの強いビワの若葉など。そしてノビルは酢味噌和えでいただいた。
誕生日プレゼントは長男の作ったかたつむりのレゴ作品に、かたつむりの絵、かたつむりイラストのプラ板、次男の描いた絵のようなもの、そして妻からの手紙…。
最後にみんなでおいものケーキを食べて、誕生日イベントは終わり。ここ最近夜はすぐに寝てしまう次男も、この日は起きていてくれた。
私の弾き語りコンサートも予定されていたけれど、すでにだいぶ夜遅かったので、それはまた別の機会にした。
長男が考えて作ったレゴのかたつむり。
私は、自分の誕生日が野草がおいしいこの時期で良かったと実感している。
野草は食べやすいものも多いが、苦かったり、酸っぱかったり、個性的な香りがあったりと、種類によってクセがある。この味が好きだとか、この味が嫌いだとか、人間の嗜好も成長に伴って少しずつ変わっていく。
自分にとって今何が必要で、今何が大切なものなのか、自分自身の状態に敏感であるためには、個性豊かな野草を食べてみるように、画一的でない物事にふれることが必要なのかもしれない。(ときどきアート展などに行っても、似たようなことを思う)
天ぷらという調理法で、クセの強いものも味わいやすくなる。クセのある風味が好きだと思ったら、そのときあらためて、その素材を生かした調理法を考えたらいい。
誕生日ケーキも妻と子どもが作ってくれた。
忙しい暮らしのなかでは、しばしば自分の気持ちに鈍感になってしまうし、自分にとって何が大切なことなのか、見失いがちである。
私自身もクセが強い人間だ。
まずは天ぷらのように食べやすく、自分をうまく表現したいものである。
(※野草の採取は保護地域や私有地でないことを確認し、節度をもって行いましょう。念のため。)
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