【フィールドノート】ジンガサハムシの見つからない日
自然は、何が起きるか予想がつかない。それが良い。
あらかじめ狙いの生きものがいたとしても、それに出会えるとは限らない。というか、むしろ出会えないことの方が多いようにさえ思う。
でも、それがいい。
『きんぴかのむし じんがさはむし(月刊かがくのとも 2023年6月号)』(福音館書店)
この日は金ぴかの「ジンガサハムシ」の絵本を読んでから出発!
みんなジンガサハムシを見つける気満々で、食草であるヒルガオを探しながら歩く。歩く。
…しかし、ヒルガオがなかなか見つからない。
ただ、1つの何かを見つけようとする姿勢は、別の何かを見つけるきっかけになる。
やがて、1人の小さな脱線が始まる。
カワトンボの仲間
その子は、徐ろに散策コースの脇にあった、水路に降りた。
そのまま水路を歩いて生きものを探す。
さっそく、素早く飛んだり止まったりするカワトンボが目に入る。
カワトンボを追いかけて奥へと進むうちに、関心は他所へと移る。
水の中には何がいるんだろう?
すぐにたくさんのヨコエビが見つかった。
なんかいる!
ガサガサすればするほど、おびただしいほどのたくさんのヨコエビ。
こうなると、子どもたちの勢いは止まらない。
ヨコエビを大量に捕獲していると、どんどんヨコエビ以外の生きものが見つかり始める。
ヌマエビ、カゲロウ幼虫、サワガニ・・・。
またあるとき、1人が私に「この虫なあに?」と聞く。見るとそれは、ヤマトカワゲラの成虫!
ヤマトカワゲラ
辺りをよく見ると、コンクリートの壁面にいくつもカワゲラの抜け殻がくっついている。
ここにこんなにカワゲラがいたんだ…!
いつも通っている水路も、探してみると、意外なほど多くの生きものがいることに気付かされた。
それは、見つからなかったジンガサハムシのおかげで、出会えた生きものたちだった。
目的から外れたものとの出会いも、大切なそのときだけの出会いである。
あらかじめ設定した目的にとらわれてしまうと、多くの新しい発見を見逃すことになる。
何が起こるかわからないのが自然の魅力の1つなのに、事前に予想できたものしか目に入らないとしたら、とてももったいない。
また、いないジンガサハムシのおかげで、生きものを見つけたい気持ちや、さがそうとする姿勢や注意力が生まれる。
それが、実はほかの生きものと出会うきっかけにもなっている。
さらには、ジンガサハムシに出会わなかったことで、次につながる。
「今日は楽しかったね。次は、あらためてジンガサハムシをさがそう!」
(NPO法人産の森学舎での、ある日のしぜん授業にて)
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