【フィールドノート】ジンガサハムシの見つからない日

目当ての生きものが見つからないことで、新たな発見がある。
野島智司(マイマイ計画) 2024.06.18
誰でも

自然は、何が起きるか予想がつかない。それが良い。

あらかじめ狙いの生きものがいたとしても、それに出会えるとは限らない。というか、むしろ出会えないことの方が多いようにさえ思う。

でも、それがいい。

『きんぴかのむし じんがさはむし(月刊かがくのとも 2023年6月号)』(福音館書店)

『きんぴかのむし じんがさはむし(月刊かがくのとも 2023年6月号)』(福音館書店)

この日は金ぴかの「ジンガサハムシ」の絵本を読んでから出発!

みんなジンガサハムシを見つける気満々で、食草であるヒルガオを探しながら歩く。歩く。

…しかし、ヒルガオがなかなか見つからない。

ただ、1つの何かを見つけようとする姿勢は、別の何かを見つけるきっかけになる。

やがて、1人の小さな脱線が始まる。

カワトンボの仲間

カワトンボの仲間

その子は、徐ろに散策コースの脇にあった、水路に降りた。
そのまま水路を歩いて生きものを探す。

さっそく、素早く飛んだり止まったりするカワトンボが目に入る。

カワトンボを追いかけて奥へと進むうちに、関心は他所へと移る。

水の中には何がいるんだろう?

すぐにたくさんのヨコエビが見つかった。

なんかいる!

なんかいる!

ガサガサすればするほど、おびただしいほどのたくさんのヨコエビ。

こうなると、子どもたちの勢いは止まらない。

ヨコエビを大量に捕獲していると、どんどんヨコエビ以外の生きものが見つかり始める。

ヌマエビ、カゲロウ幼虫、サワガニ・・・。

またあるとき、1人が私に「この虫なあに?」と聞く。見るとそれは、ヤマトカワゲラの成虫!

ヤマトカワゲラ

ヤマトカワゲラ

辺りをよく見ると、コンクリートの壁面にいくつもカワゲラの抜け殻がくっついている。

ここにこんなにカワゲラがいたんだ…!

***

いつも通っている水路も、探してみると、意外なほど多くの生きものがいることに気付かされた。

それは、見つからなかったジンガサハムシのおかげで、出会えた生きものたちだった。

目的から外れたものとの出会いも、大切なそのときだけの出会いである。

あらかじめ設定した目的にとらわれてしまうと、多くの新しい発見を見逃すことになる。

何が起こるかわからないのが自然の魅力の1つなのに、事前に予想できたものしか目に入らないとしたら、とてももったいない。

また、いないジンガサハムシのおかげで、生きものを見つけたい気持ちや、さがそうとする姿勢や注意力が生まれる。

それが、実はほかの生きものと出会うきっかけにもなっている。

さらには、ジンガサハムシに出会わなかったことで、次につながる。

「今日は楽しかったね。次は、あらためてジンガサハムシをさがそう!」

(NPO法人産の森学舎での、ある日のしぜん授業にて)

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