【エッセイ】じーっと見ているからわかること
春になり、庭池ビオトープに水が溜まり、毎日少しずつ変化があるのが楽しい。
今年もニホンアカガエルが産卵したかと思えば、昨年に続いてカスミサンショウウオも姿を現し、次はアカハライモリが出てくるかな?と思ったら、ヤマアカガエルが顔を出す。ときには、ちょっと困った存在のウシガエルさん(特定外来生物)も登場する。
庭池をぱっと見ただけで、ニホンアカガエルの卵塊の存在には気づく。
でも、ぱっと見ただけでは、時々しか姿を現さない生物、カスミサンショウウオやウシガエルの存在には気が付かない。
じーっと見ていると、それだけで、同じ光景が別のものに見えてくる。

庭池ビオトープの卵塊たち

卵塊の下からひょっこり、カスミサンショウウオの胴体としっぽが…!
また、ヤマアカガエルがいたのは今年が初めてだった。
庭池近くの一時的な水たまりには、毎年多くの卵塊が産み落とされる。
放っておくと車でひいてしまうので、見つけるとすぐ庭池ビオトープに移す。
そんな数多の卵塊のなかに、1つ、手ですくい上げるとするするとちぎれて散らばるものがあった。明らかに異なるやわらかさで、指の隙間からこぼれ落ちる。
それがヤマアカガエルの卵塊の特徴で、産の森学舎のビオトープを含め、毎年手ですくってきたからこそ気づけた違いだった。
その次の瞬間、水たまりに隠れていたヤマアカガエルらしきカエルにも出会えた。
私に気づいて逃げるニホンアカガエルに抱きついた、より茶色の濃いカエルがいたのだ。
毎年じーっと見ているから気づけた、今年の変化である。

ニホンアカガエルに抱きつくヤマアカガエルかもしれない個体。
ところで、テトコトというオルタナティブスクールでの活動中、たまたま見つけたハリガネムシをじーっと観察する女の子がいた。
たくさんの疑問が、自然に湧いてくるようだった。
「何センチくらいあるんだろう」とか、「どうやって(カマキリの体内に)入っていたんだろう」とか、「何を食べるんだろう」とか。
そして、もっと知りたい。もっと知ろうと行動する。ふれて確かめようとする。
こうした問いが生まれるのは、まさに、じーっと見ているからだろう。

ハリガネムシはカマドウマやカマキリなどの寄生虫で、繁殖のためにカマキリを水辺に行くように体内から操作することで知られる。
じーっと長い時間、長い期間、見続けないと気が付かないことっていっぱいある。
特に、カタツムリのようなゆっくりした生きもののことは、ゆっくりした気持ちで見ていないと、なかなか理解できそうもない。
時間軸だけでなく、マクロな視点で見たり、ミクロな視点で見たりすることで、気付けることもある。
じーっと見ることや、じーっと見ていた人の言葉や気持ちを聞くことを、いつも大事にしていたい。

一時的な水たまりにあった、ヤマアカガエルの卵塊と、ニホンアカガエルの卵塊
庭池ビオトープに卵塊がたくさん集まることは、良いことばかりとも言えない。
ニホンアカガエルの産卵しやすい場所が近所にもっとたくさんあれば、こんなに庭池ビオトープに卵塊が集中しないはずである。
それだけ、地域の良い湿地が少なくなっているのだろう。
ニホンアカガエルやヤマアカガエルは冬の寒い時期に産卵する。
天敵の少ない時期にいち早く産卵することで、外敵におそわれる危険を減らしているらしいのだが、実際にはイモリやサンショウウオ、サギやカモなどにとって、彼らのオタマジャクシが貴重な餌になっている。むしろ餌の少ない時期なので、貴重な栄養源である。
ニホンアカガエルやヤマアカガエルは絶滅危惧種だが、それを食べるイモリやサンショウウオもまた、絶滅危惧種。
もっと豊かに彼らの産卵できる場所があれば、安心して見ていられるのだが。

背中線が途切れずまっすぐでニホンアカガエルみたいだけど、斑紋はヤマアカガエルっぽい個体。自然ははっきりしてくれない。
じーっと見ていることの大切さは、生きものに限らない。
きっと、いろいろなことに通じる話である。
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