【レポート】思いどおりに進まない?! ―発達心理学脱線ゼミVol.58―

小さな脱線研究所主催「発達心理学脱線ゼミ Vol.58」の開催報告です。
野島智司(マイマイ計画) 2024.04.21
誰でも

こんにちは。ネイチャーライターの野島智司です。
新年度、バタバタしがちな今日このごろです。

そんななか、4月21日(日)は2ヶ月ぶりの発達心理学脱線ゼミVol.58でした。
今回はアリソン・ゴプニック『思いどおりになんて育たない ―反ペアレンティングの科学』(森北出版)の第1章「ペアレンティングに異議あり」です。

オープンな告知が間に合わなかったこともあり、オンラインで2人、対面で1人と、私たち夫婦2人と、合計5人の常連メンバーのみのゼミになりました。
そのため常連ばかりの顔ぶれで、なんだか心理的安全性が高く、脱線しやすい日でした。
おかげさまで、だいぶ脱線話が盛り上がり、小さな脱線研究所としては大成功。
それも、結局は内容と関係のある「小さな脱線」だったなぁという印象です。

本の内容はなかなか思いどおりに進みませんでしたが…。

アリソン・ゴプニック『思いどおりになんて育たない 反ペアレンティングの科学』(森北出版)

アリソン・ゴプニック『思いどおりになんて育たない 反ペアレンティングの科学』(森北出版)

今回の内容も「ペアレンティング」への問題提起です。(というか、そこから先に進んでいない…。)
ペアレンティングとは、「親がなすべきこと」のような意味の子育て規範、ハウツー的なもの。
ここでは、そうしたペアレンティングが、かえって子どもと親の生活を悪くしているという筆者の問題意識について書かれていました。

しかし、なぜか盛り上がった脱線話は、きょうだいのケンカに親がどう関わるかという話です。

「おにいちゃんだから」「おねえちゃんだから」という理由で一方の子が我慢を強いられたり、逆に親が放任することで、腕力が強い子や口の達者な子の思いのままになってしまったり、あるいはそう単純でもなかったり、それぞれの実体験などから色んな事例が語られました。
親が一方的にジャッジするのではなく、それぞれの主張を交通整理をする役割を担えると良いよね、という話にみんな同意する一方で、話し合いができる年齢/発達段階ではない場合もある、という指摘もあったりしました。

また、取っ組み合いのケンカ体験が、身体感覚を育てたり力加減を覚えたりすることにつながるのかとか、精神的なつながりが深まるのかどうか、という話題も出ました。今回のゼミ参加者や私の経験からは、ケンカは役に立たず、遊びやスポーツの方が力加減を覚えるには役に立ったよね…という感じ。

それから、本の内容に立ち返り、こうした議論から出てくるものもまた一種の「ペアレンティング」であり、時代や社会・文化、状況によって結論は変わってくるかもしれない、という話にもなりました。
たとえば、長男が日常的に優遇される時代や文化であれば、「お兄ちゃんだから」と我慢させられることの意味合いも変わってくるわけで、どういう関わりが良いのかの普遍的な基準を作るのは簡単ではありません。
また、祖父母などの第3者が子育てに関わっていれば、子どもにとっては逃げ場が生まれるため、親の関わり方の意味合いも変わってきそうだという意見もありました。

結局、あるべき人間像に持っていこうとする「思いどおりに育てよう」という気持ちから、「こうすべき」という規範は生まれてきてしまいます。「じゃあ、親はどんなふうに考えて、どうすればいいと著者は考えているの?」という肝心なところは、まだまだこれから。

続きが楽しみな、ゆっくりペースのゼミですが、次回も第1章の続きからです。
5月19日(日)の10時から12時を予定しています。

参加申込はこちらからどうぞ。

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開催・参加予定のイベント

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